連載コラム第3回:薪ストーブ煙突の選び方と安全のためのガイドライン

連載コラム第3回:薪ストーブ煙突の選び方と安全のためのガイドライン

連載コラム第1回:DIYで煙突・薪ストーブを設置する魅力とは?から始まった連載コラム、前回の連載コラム第2回:煙突DIY設置に必要な知識と法律・安全基準 では薪ストーブの安全基準について建築基準法や消防法など法規面から見ていきました。

第3回となる今回は、実際に薪ストーブを設置する際に必要な安全のためのガイドラインと、煙突の選び方とについて詳しく解説していきます。

守るべき煙突の安全基準

前回のコラムで述べたように、薪ストーブや煙突の設置に関して建築基準法や消防法で規定があります。しかし法律で決められた基準をそのまま採用するだけでは危険な場合があります。そこで日本暖炉ストーブ協会などの業界団体が、アメリカのNFPA(The National Fire Protection Association:米国防火協会)の基準や欧州のEN基準といった国際的な安全基準を参考にして、より安全性を高めるための「設計・施工ガイドライン」を独自に定めています。法的拘束力はありませんが、事実上の日本国内の最高水準の安全基準となっています。

つまり、法的には日本の法律・条例に従いながら、より高い安全性を確保するために、業界が国際基準を参考にした自主基準を運用している、という現状です。NFPAでは断熱二重煙突は可燃物から最低50mm以上の離隔距離が必要とされています。これは最低離隔距離であり、NFPA基準以上に優先されるべき重要なルールは、メーカーが指定する離隔距離に従うことです。これについては後述します。

建築基準法の、「煙突は、建築物の部分である木材その他の可燃材料から十五センチメートル以上離して設けること」というのはシングル煙突のことを指すので、これは断熱二重煙突の場合インナーライナー(内筒)に該当。一般的に薪ストーブで使われるφ200の断熱二重煙突は内筒φ150に25mmの断熱材の層があります。よって断熱二重煙突の表面から可燃物までの距離は125mm以上の離隔距離を取ることになります。つまり屋根等に開口する場合、煙突芯を中心に最低でも450mmの空間を設ける必要があるということ。この離隔距離だと法律と実際の安全基準をどちらも満たすことができます。

もちろんこれは断熱二重煙突を使用した場合の話で、シングル煙突の場合は離隔距離は最低18インチ(約460mm)という基準があるのでこれを満たしません。基本的に屋根や壁を貫通するところは断熱二重煙突を使う必要があります

煙突メーカーが指定する安全基準とは?

米国の場合、NFPAの基準と合わせて、それ以上に優先されるべき重要なルールが、製造者がテストして保証した安全距離が明確に示されていること、その指示に従うことが法的な要件となるということです。米国以外の国ではどうでしょうか。

欧州の一例として北欧の薪ストーブ先進国デンマークを見てみましょう。デンマークでは薪ストーブや煙突について、建築基準法「BR18」および関連する法令によって厳しく規制されています。BR18では、薪ストーブに接続する煙突は、特定の安全基準や性能基準を満たすことを義務付けています。例えば、薪ストーブ用の煙突は温度分類「T400」以上でなければならない、といった規定がそれに当たります。

では、その煙突製品が「T400」の基準を本当に満たしていることを、どのように証明するのでしょうか?そこで登場するのがCEマーキングです。

CEとは、EU域内で販売される製品に義務付けられている安全基準適合マーク。煙突のCEマーキングは、その製品が欧州の統一規格に基づいて試験され、基準をクリアしていることを示します。このCEマークが付いた製品情報には、温度分類や、可燃物からの安全な離隔距離といった重要な性能が明記されています。

つまり、BR18で定められた法的な設置基準を満たすためには、その基準に適合していることを証明するCEマーキングが付いた煙突製品を使用する必要がある、ということです。

第三者機関による安全性の証明

欧州規格(EN 1856-1)に基づいて、煙突の性能を示したCEマーキングのコードには明確な意味があり、製品の耐熱性・耐腐食性・耐火性・圧力分類などを表しています。SCANDI LINE 断熱二重煙突を例にすると次のような表示になります。

T600-N1-W-V2-L50050-G50

T600:温度等級 (Temperature Class)
T600は定格運転温度が 600℃ であり、700℃の排気テストをクリアしている

N1:圧力等級 (Pressure Class)
N1は負圧(Negative)運転用であることを意味し、漏出は40Paで1秒間に2ℓ/m²以下

W:凝縮水耐性等級 (Condensate Resistance Class)
Wはウェット(Wet)条件での使用が可能であることを示す

V2:耐腐食性等級 (Corrosion Resistance Class)
V2は木材やガス、灯油を燃料とした場合に発生する腐食生成物に対して耐性があることを示す

L50050:ライナー(内筒)の材質と厚さ (Liner Specification)
L50:煙突内部の材質が L50(SUS316L相当)
050:使用される材料の厚みが 0.50mm

G50:煤火災耐性と可燃物からの離隔距離 (Sootfire Resistance and Distance)
G:1000度で30分煙道火災テストをクリア
50:壁などの可燃物から安全な距離が50mm

日本国内の販売においてCEマーキングは必要なものではありませんが、この表示がある製品は、第三者機関により安全基準と性能基準を満たしていることが証明されているため安心して使用することができます。薪ストーブや煙突を選ぶ際には、これらの国際基準を満たしているかどうかは一つの選択基準になります。

DIY設置に挑戦する前にガイドラインを確認する

薪ストーブを設置する場合、DIYで全てやるというのは少数派でしょう。ほとんどは薪ストーブ専門店や工務店などに設置を任せることになると思います。しかしDIY施工の場合はもちろんですが、設置を一任する場合でも防火対策や薪ストーブ運用に関する最低限の知識は持っておいた方が良いと思います。

ここに薪ストーブ設置と煙突の設置に関して知っておくべき事項を挙げておきます。

  • 風圧帯を避けるため、煙突のトップは屋根面から900mm以上高くする
  • 水平距離で3m以内に棟などの建築物がある場合は、それより600mm以上高く
  • シングル煙突の可燃物までの離隔距離は460mm以上(天井まで600mm)
  • 断熱二重煙突から可燃物までの離隔距離は125mm以上確保する
  • 屋根や壁などの貫通部、屋外部分には必ず断熱二重煙突を用いる
  • 薪ストーブの燃焼に必要なドラフトを確保するために、煙突の長さは最低4m必要
  • 理想的なドラフトを得るために煙突は可能な限り真っ直ぐ設置し、不要な曲げは避ける
  • 煙突の横引きは可能な限り短く、できれば1m以内におさめる
  • ストーブの周りに炉壁を作る場合は25mm以上の空気層を設ける
  • 煙突の施工時には煙突掃除などのメンテナンス性も考慮する

まとめ

薪ストーブのDIY設置には、大きな楽しさと満足感があります。しかしそれを支えるのは、しっかりとした知識と安全基準への理解です。薪ストーブと煙突の設置を検討される方に向け、連載コラムを通して主に法令と日本国内の安全基準となる施工ガイドラインについてお話ししました。

3回に分けた連載コラムは一旦ここで終わりにして、薪ストーブや煙突の設置に役立つ情報を随時発信していきたいと思います。ここまで読んでいただいてありがとうございました。

SCANDI LINEでは、DIYユーザーのためのサポートや相談も受け付けています。「思い切ってやってみよう!」と思ったその時に、ぜひご相談ください。

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